人って意外と、何かに「こだわる」生き物だと思います。
僕もお酒を飲むときはお気に入りのグラスを使いたいし、野球をやっていた頃は道具のメーカーに妙にこだわっていました。ゲームでも、自分なりのやり方や使うキャラ、プレイスタイルにこだわったりします。
きっとこの記事を読んでいるあなたにも、自分だけのちょっとした“マイルール”があるんじゃないでしょうか。
その「こだわり」って、ヨガにも自然と現れています。ヨガマット、ウェア、呼吸のリズム、レッスン前のストレッチ…ヨガを続けていくうちに、「これが自分に合う」「この流れが落ち着く」という感覚が出てきて、それがやがて“自分だけのヨガ”をつくっていきます。
ヨガにおける「こだわり」は、ただの好みではない

ヨガは他のスポーツや運動に比べて、使用する道具が圧倒的に少ないです。
だからこそ、一つひとつへの思い入れが強くなりやすいとも言えます。
たとえばウェア。
動きやすさを最優先する人もいれば、肌ざわりや吸汗性にこだわる人、見た目や色味でモチベーションが上がる人もいます。「このウェアだと気分が上がるから、動きも軽くなる」という感覚、きっとあるはずです。
マットも重要なこだわりポイントです。
厚さやグリップ力、素材感、持ち運びやすさ、ブランドなど、こだわる要素はたくさんあります。「このマットじゃないと集中できない」「この感触が安心する」など、自分にフィットする一本を見つけた人ほど、マットに対して強いこだわりを持っています。
その他にも、お香の香りやティンシャの音、レッスンの時間帯、道具の配置場所、始める前の呼吸やストレッチなど、細かなこだわりは人それぞれです。
こうしたこだわりは、単なる気分や癖ではありません。
こだわりは集中力を高め、心と体を調整する「スイッチ」のような存在。
自分を整えるために必要な“儀式”のような意味を持っているのです。
こだわりが生まれる理由──ヨガは自分と向き合う時間だから

なぜヨガでは「こだわり」が自然と生まれるのでしょうか?
その理由は明確です。
ヨガは他人との比較や勝ち負けを目的とするものではなく、常に「自分と向き合う」時間だからです。
たとえば日々ヨガを続ける中で、「このポーズの前にはこの動きを入れると調子がいい」「この音楽を流すと集中できる」「この香りが落ち着く」など、自分の心身に合った流れや環境がだんだんと見えてきます。それが積み重なって“こだわり”になっていきます。
こうした現象は、実はスポーツの世界でもよくあることです。
プロ野球のイチロー選手が行っていた、打席に入る前の一連の動作──バットを立て、袖を引っ張り、構えを整える──あのルーティンも、まさに「自分を整える儀式」でした。
あの動作によって、毎回同じ心理状態で打席に立つことができる。つまり、自分のベストコンディションを再現するための“こだわり”ではないでしょうか
ヨガでも、それと同じことが起きます。
「このマットの感触」「この空間の静けさ」「この呼吸の深さ」など、些細に見えるこだわりが、精神的な安心や集中力に大きく影響してきます。
だからこそ、こだわりがあるということは、ヨガをただの運動としてではなく、自分にとって意味のある時間として向き合っている証でもあるのです。そうすればヨガの効果は向上するはずです。
こだわりはヨガを深める。でも“執着”には気をつけたい。

ヨガにおけるこだわりは、自分を整えるための儀式であり、日常に豊かさをもたらしてくれるものです。
でも実はここに、ひとつ注意しておきたいことがあります。
それが「こだわりが強くなりすぎると、“執着”になる」ということです。
ヨガの哲学には「八支則」という教えがあります。その中の“禁戒(ヤマ)”のひとつにアパリグラハ(執着)という教えがあります。
これは簡単に言うと、「物事や感情、習慣にしがみつかない心を持とう」というもの。こだわりが過剰になって、それがないと落ち着かない、満足できない…という状態になってしまったら、それはもう“執着”なんですね。
たとえば「このマットじゃないと集中できない」「この音楽がないと落ち着かない」──それがあることで心が整うのは素晴らしいことですが、もしそれがないだけでイライラしたり不安になったりするなら、それはヨガが教えてくれる“自由”や“今この瞬間を受け入れる心”から、少しズレてしまっているかもしれません。
だから僕は、こだわりはあっていい。でも、それに縛られすぎなくていいと思っています。
マットが違ってもできる、場所が変わっても呼吸はできる。
そんな柔軟さも、ヨガの本質のひとつです。
こだわりがあるから、ヨガはもっと楽しく、深くなる
これからヨガを始める人や、指導を始めたばかりの人には、ぜひ「こだわりを持つ楽しさ」を知ってもらいたいです。
たとえば最初にマットを選ぶとき。
「とりあえず安いやつでいいや」と思うかもしれません。でも、「色が好き」「デザインが落ち着く」など、直感でもいいので“自分の気分が良くなる一本”を選ぶと、それだけでヨガの時間がぐっと楽しくなります。
ウェアや音楽、香りにこだわってみてもいいでしょう。
僕自身も、ヨガを始める前にお気に入りのフローで準備運動することで、自然と気持ちが整い、呼吸が深くなるのを感じます。
また、「朝の静かな時間が好き」「夜のリラックスタイムが心地いい」など、自分に合った時間帯にヨガをすることも、立派なこだわりのひとつです。
そうしたこだわりがあることで、自分のヨガのスタイルがどんどん確立されていきます。
でも大事なのは、こだわりを持つことで「ヨガがより好きになる」こと。
そして、「もしそのこだわりが叶わなくても、別に大丈夫」と思える心の余白を育てることです。
まとめ
ヨガにおける「こだわり」は、自分らしさの表れであり、集中や安心のための“スイッチ”でもあります。
お気に入りのマット、肌ざわりのいいウェア、落ち着く香り、心が整う音楽。
それらはすべて、自分をより良い状態に導くための“準備”です。
でも、それに執着しない柔らかさも、ヨガの大事なエッセンスです。
“こだわりはあるけど、なくてもできる”。そんな軽やかな感覚で、あなたのヨガをもっと楽しんでください。そうすればヨガはもっと効果的なものになるはずです。
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